歩いて作る動物図鑑。エチオピアのハラールにてブチハイエナを至近距離で接写!

肉を咥えて鋭い歯をむき出しにするハイエナのクローズアップ写真

絶滅危惧ランク

EX
Extinct(絶滅)
EW
Extinct in Wild(野生絶滅)
CR
Critically Endangered(絶滅寸前)
EN
Endangered(絶滅危惧種)
VU
Vulnerable(危急種)
NT
Near Threatened(準絶滅危惧)
LC
Least Concern(低リスク)

ハラールは有名番組でも取り上げられた城塞都市ハラール。ここには街の外で餌やりをすることで、街への侵入を防ぐ”ハイエナマン”がいる。

日本でハイエナと至近距離と関わる機会はまずないだろう。世界中を探してもこのスリリングな体験をできるのはハラールくらいかと思われる。街へのハイエナの侵入を防ぐために餌やりをしているので、城塞から出た外で行われる。夜になり、真っ暗になると足音や鳴き声が見えないところから聞こえてくる。しかもいつの間にかかなりの数がいるようだが、視認することはできない。周りに旅行者がいるのでそこは安心だ。自分の場合は一度これを見た後、後日個別にやって欲しいとハイエナマンに相談した。もちろん料金は多めに出して承諾してくれた。街で知り合ったフランス人の友人を連れてこの撮影に協力してもらった。ハイエナの接写はその時に成功したのだが、その友人にで撮影結果を見せたのだが「ただの犬じゃん」と言われたことは忘れない。

夜の闇に浮かび上がる、棒から肉を咥えるハイエナの接写。エチオピアのハイエナマンの餌付け風景

毎日夜になると餌やりをやっている

エチオピアのハラールには、現実に「ハイエナマン」と呼ばれる人物がいます。彼は観光客向けに夜な夜な野生のハイエナに餌を与える伝統的なパフォーマンスを行う男性で、ハラール旧市街の外れに現れます。口にくわえた棒の先に肉を刺し、それをハイエナに与えるというスリリングな光景は、ハラールの風物詩とも言えます。この風習は数十年にわたって続けられており、もともとはハイエナによる家畜被害を防ぐため、宗教的な儀式として始まったとも言われています。野生動物との共存という独特の文化を象徴する存在であり、都市と野生が共にあるハラールならではの魅力です。観光客にとっては一種のアトラクションですが、現地では信仰や習慣とも結びついた深い意味を持っています。

ハラールの夜、餌を咥えようとするハイエナの大きな口と牙を間近で撮影した写真

ただただ至近距離で撮影してみたかった

ハイエナはアフリカでも屈指の強力な噛む力を持つ動物で、特にこのブチハイエナの顎の力は非常に強く、約1,100psi(約78kg/cm²)にも達すると言われている。この力は大型の肉食獣の中でもトップクラスで、ライオンにも匹敵するほど。彼らの強靭な顎は、獲物の骨を噛み砕いて中の骨髄まで食べるために進化しており、大腿骨などの硬い骨も簡単に割ることができる。この能力のおかげで、他の動物が残した死骸のほとんどすべてを消化でき、自然界の「掃除屋」としての役割も担っている。かなり危険だがその牙を見たくて超近距離で撮影させてもらった。芸術性はないが、撮っている時に感じる吐息や租借音は忘れられない。

エチオピア・ハラールで夜間に撮影された子供のブチハイエナと成獣の写真

悪いイメージがもたれがちな悲しい動物

この動物が忌み嫌われるようになった背景には、生態的特徴と神話的解釈が深く関係しています。まず、ブチハイエナの雌は雄に似た外性器をもち、かつ社会的にも優位であることから、古代から「雌雄同体」や「性の逆転」といった不自然さの象徴とされてきました。これが人間の性の秩序を乱す存在と捉えられ、「不気味な生き物」として恐れられました。また、中世ヨーロッパではハイエナが墓を掘り死体を食べるという噂が広まり、死や悪魔と結びつけられました。聖書の翻訳でも「ハイエナ」が登場し、邪悪な存在の象徴とされることもあります。さらに、アフリカ各地の民間伝承では「人間に化けるハイエナ」や「呪術師の使い魔」として語られるなど、魔術や死霊との結びつきも強く、こうした神話と誤解が現在の負のイメージを形成してきたのです。

世界遺産ハラール旧市街の石畳の道と暮らし

城塞都市ハラール

某有名番組でも取り上げられたハラール。エチオピア東部に位置するハラールは、7世紀以降にイスラム教が伝わり、アフリカで最も古いイスラム都市の一つとして発展しました。特に16世紀には、アフマド・グランによるアダル・スルタン国の首都として栄え、商業や学問、宗教の中心地として重要な役割を果たしました。ハラールの旧市街(ジャグル)は5つの城門と82のモスクを持ち、「アフリカのメッカ」とも呼ばれました。イスラム文化とアフリカ先住の伝統が融合した独特の建築と生活様式が今も残り、2006年にはユネスコ世界遺産にも登録されました。また、夜にハイエナへ餌を与える「ハイエナマン」の文化でも知られています。

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