歩いて作る動物図鑑、バリ島にしかいない超希少な鳥、カンムリシロムク(ジャラックバリ)を撮影!

枝にとまり、マメ科植物の赤い鞘にくちばしを伸ばすカンムリシロムク(ジャラックバリ)。光を受けて白い羽毛が輝き、青い顔が印象的に浮かび上がっている。

絶滅危惧ランク

EX
Extinct(絶滅)
EW
Extinct in Wild(野生絶滅)
CR
Critically Endangered(絶滅寸前)
EN
Endangered(絶滅危惧種)
VU
Vulnerable(危急種)
NT
Near Threatened(準絶滅危惧)
LC
Least Concern(低リスク)

バリ島の西部国立公園に限定定期に生息するカンムリシロムク、手軽に見るならバリ・バードパークがおすすめ

インドネシアのバリ島は日本人にとっても手軽に行けるリゾート地として馴染みがある。実はこのバリ島にも生息数わずかな希少な鳥がいる。それがこの鳥で、現地ではジャラックバリと呼ばれている。本来、西部国立公園近隣にしか生息しておらず厳重に保護されている。また、ヌサペニダ島という島でも見ることはできるようだがこちらは人工繁殖されているものだ。日本の動物園では見ることができないが、バリ島のバリ・バードパークでは飼育されている。こちらは市内から簡単に行けるしいろんな鳥と触れ合えるので、普通の旅行でも楽しめる。野生に拘らないならこちらがおすすめだ。

細い枝にとまり、冠羽を立てて周囲を見渡すカンムリシロムク。暗い背景の中で純白の羽と青い顔が際立っている。

白い体に青い顔、立派な冠羽が特徴だ

白い体に青い顔が神秘的なカンムリシロムク。「カンムリ(冠羽)」は、警戒や威嚇のときに立ち上がり、敵や見知らぬ相手に対し自分を大きく見せようとする。また、オスがメスにアピールする求愛行動の際には長い冠羽を立てて、体を上下に揺する”ボビングディスプレイ”と呼ばれる行動をとる。このコバルトブルーの顔は撮り同士の個体識別や求愛の際に重要だと言われている。

西部国立公園では自然体では自然体でたくさんの姿を見ることができる。

西部国立公園では、早朝に豆の木があるポイントに行くとかなりの数のカンムリシロムクが集まっている。こぞってソラマメサイズの豆を食べているのだ。保護施設付近にいる個体は、施設で用意されたバナナなどのフルーツを食べている。たくさんいるので絶滅危惧種であることを忘れてしまいそうだが、世界中でもここでしか見ることはできない。

枝の上を軽やかに歩くカンムリシロムク。白い羽と黒い翼端が緑の背景に美しく映えている。

村全体で保全活動が行われている。

現在ではIUCNレッドリストで「CR(Critically Endangered:絶滅寸前)」に指定されるほど個体数が激減している。最大の原因は密猟と違法ペット取引だ。白く美しい羽と青く特徴的な顔を持つことから、観賞用として高値で売買され、1999年には野生個体がわずか12羽になったとされている。さらに、生息地の森林伐採や農地・観光開発によって生息範囲が狭まり、巣作りや採食が難しくなった。
現在、野生での確認個体数はおおよそ500羽前後と推定されており、極めて限定的な地域にしか生息していない。西部国立公園にはカンムリムクドリの繁殖センターもあり、人工繁殖によって増えた個体を段階的に自然に戻す「再導入(リリース)」が行われている。放鳥前には適応訓練用の大型ケージで自然に近い環境に慣れさせ、適応能力を高めています。また、センター周辺の村では住民による監視や餌付け、巣箱の設置などが行われており、地域一体となった保護活動が進められている。

バリ西部国立公園の林床に佇むジャワヤケイ。柔らかな木漏れ日の中で、自然の静寂に溶け込むように立ち尽くしている。

西部国立公園の動物達

バリ西部国立公園(Taman Nasional Bali Barat)は、バリ島唯一の本格的な自然保護区であり、カンムリシロムクの原生地として有名。デンパサールやクタなどバリ島の主要観光地から車で約4〜6時間とアクセスは容易ではなく、観光ルートから外れた“秘境”のような存在だ。しかし、その分人が少なく、手つかずの自然が色濃く残るこの場所は、自然観察や野鳥撮影には理想的な環境だ。
熱帯乾燥林、マングローブ、サバンナ、サンゴ礁と多様な生態系が広がり、カンムリシロムク以外にも、サル、シカ、オオトカゲ、200種以上の鳥類などが生息している。この写真は国立公園内で撮影したアオエリヤケイという世界でも珍しい野生種の鶏だ。

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